空っぽの部屋

本編

新しいアパートに引っ越してきたばかりの僕。隣の部屋はいつも静かで、住人の気配すら感じない。ある日、好奇心に駆られて隣のドアをノックした。反応はなし。管理人に尋ねると、「あの部屋は空っぽですよ」とのこと。

それから数日後、深夜、壁からかすかな女性の泣き声が聞こえた気がした。翌朝、確かめに行くと、やはり反応はなし。管理人に再度尋ねると、彼は首を横に振り、「絶対に空っぽです」と強調した。

その夜、僕はふと、壁に耳を当てた。すると、（これは…女性の声だ。しかも、まるで隣の部屋から聞こえてくるようだ…）と思った。さらに驚いたのは、声が僕の名を呼んでいることだった。「なぜ、僕の名前を…？」と心の中で呟いた。

翌日、管理人に再び尋ねたが、彼は断固として「空っぽ」と言い張る。だが、僕は確信していた。あの部屋には何かがいる。そして、それは僕に何かを伝えようとしている。

その夜、再び壁に耳を当てると、女性の声がはっきりと聞こえた。「あなたを待っていたの…」と。恐怖と好奇心が入り混じった僕は、隣の部屋に向かった。ドアを開けると、そこには何もなく、ただの空っぽの部屋。だが、中央には一枚の古い写真が落ちていた。写真には、僕とよく似た男性と、泣いている女性が写っていた。