本編
私が住んでいる家は、いつも深夜になると玄関の扉が少し開いている。最初は風のせいかと思っていたが、確実に閉めたはずなのに、毎晩のように開いている。それも、ちょうど人が入れるくらいの隙間で。
(こんなことって、ありえないよね……)
そう思いながら、ある晩、扉を閉めてから、隣の部屋で様子をうかがってみた。すると、真夜中、何の音もなく、扉がゆっくりと開いていく。私は息をのんで見ていたが、誰も入ってこない。ただ、開いているだけ。
(何で? 誰かいるの?)
次の日、大家に連絡して鍵を変えてもらった。しかし、その夜もまた、扉は開いていた。そこで気づいた。開いている扉の向こうに、ぼんやりと人影が見えるような……。
(あれ? 今まで気づかなかったけど……)
人影は動かない。ただ、扉の向こうに佇んでいるだけ。私は恐怖で震えた。
翌朝、隣人にこのことを話すと、彼女は驚いた顔で言った。
「あなたの部屋……以前そこに住んでた人、夜中に亡くなったんですよ。そして、その死に方がね……」
毎晩開いている玄関扉の向こうに見える人影にある。
この人影は、以前その部屋で亡くなった人のものであり、その人が夜中に亡くなっていたことが後に明かされる。
つまり、主人公は毎晩、亡くなった人の霊と対峙していたことになる。