忘れ物

本編

今朝、バスに乗った時のことだ。
いつものように席に座り、窓の外をぼんやり眺めていた。
しばらくして、急に何か忘れたような気がして、慌ててカバンを探る。
財布、携帯、鍵……全部ある。
(何を忘れたんだろう……)
でも、どうしても思い出せない。
その時、隣に座った老婦人がニコッと笑って言った。
「忘れ物、大事にしないとね」
彼女の言葉に、何かヒントがあるような気がして、もう一度カバンを探った。
でも、やっぱり何も見つからない。
(一体、何を忘れたんだ……)

夕方、家に帰るバスに乗った時、ふと思い出した。
今朝、妻と子どもを送り出してから、バスに乗ったんだ。
妻が「気をつけてね」と言ってくれた。
その時、何か言い返すはずだった。
(そうだ、『愛してる』と言い忘れたんだ……)
そう思い、ホッとして携帯を取り出した。
でも、画面には警察からの着信履歴が何件も。
どうやら、今朝、家族が交通事故に遭ったらしい。

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意味怖
影山 真夜 (Kageyama Maya)をフォローする
怖話物語
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