あらすじ
主人公は日常に飽き飽きしている。ある日、自分だけが体験する奇怪な現象に気づく。それは、生きることへの飽きが引き起こした恐怖の始まりだった。
本編
日々の生活に、どこか満足を感じられなくなっていた。仕事も趣味も恋愛も、すべてが「飽きた」という感情に飲み込まれていく。「また今日もか…」毎朝目覚めるたびに、そう思うのが日課になっていた。
そんなある日、不可解なことが起こり始めた。いつも通りの朝、目覚めると自分の部屋がほんのりと赤く染まっている。「何だこれは…」と思いながらも、その日は何事もなく過ぎ去った。しかし、その夜、更に奇妙なことが起きる。就寝しようと布団に入ると、自分が浮いている感覚に襲われた。目を開けると、実際に部屋の中央で浮いていたのだ。
「何これ…怖い…」恐怖で震えながらも、何故かその現象は翌朝には消えていた。だが、それから毎晩、異常な出来事はエスカレートしていく。壁に人の顔が現れたり、耳元で誰かの囁き声が聞こえたり。そして、最も恐ろしい現象が起きたのは、生きることへの「飽き」が頂点に達した日だった。
「もう何も感じない…」そうつぶやくと、自分の身体が徐々に透明になり始めた。鏡を見ると、確かに自分の姿が薄れていく。「これは一体…」恐怖と共に、ある種の解放感を感じる。生きることへの飽きが、自分をこの世から消し去ろうとしているのか。
しかし、この現象には逆説的な結果があった。自分が消えていく恐怖に直面し、初めて「生きたい」という感情が芽生えたのだ。「いや、まだ終わりたくない!」その叫びと共に、透明化が止まり、徐々に元の自分に戻っていく。
「生きるって、案外悪くないかもしれない。」そう思えた瞬間、すべての奇怪な現象は消え去った。生きることへの新たな見方を見つけた瞬間、日常は再び色を取り戻し始めた。