あらすじ
いつもは車通勤の主人公が気分転換に電車通勤を試みる。しかし、その日の電車には異常が潜んでいた。
本編
私はいつも車で通勤している。だが、ある日「少しは電車でも利用してみようか」と思い立った。駅へ向かう道中、心なしか周りの空気が重たく感じた。駅に着くと、いつもとは違う静けさが漂っていた。
ホームに立つと、やけに人の少なさに気付いた。いつもは朝のラッシュでごった返しているのに、今日に限ってはほとんど人がいない。その異常さに、ふと不安がよぎった。
電車が到着し、ドアが開く。中は思ったよりも空いていて、座る場所には困らなかった。しかし、乗り込んですぐに、何かがおかしいと感じた。車内の空気が、どこか冷たく、静かすぎる。
(これは一体…?)
窓の外を見ると、景色がどこか歪んで見える。まるで、現実とは違う世界を走っているかのようだった。そんな中、車内のアナウンスが響く。
「次は、終点です。終点にて、お降りください。」
しかし、そのアナウンスはいつも聞くものとは異なり、声には冷たさが混じっていた。そして、驚いたことに、終点は私の通勤先とは全く違う場所だった。
(こんなはずじゃ…)
周りを見渡すと、他の乗客たちも同じように困惑している様子。だが、彼らの表情には恐怖が浮かんでいた。電車はさらに速度を上げ、止まる気配はない。
突然、隣の席に座っていた老婆がこちらを見て、小さな声で囁いた。
「逃げられないのよ、ここからは…」
その言葉が耳に入った瞬間、電車が激しく揺れ始めた。まるで、何かに追い詰められているかのように。
(これは一体…何なんだ?)
恐怖に震える私の目の前で、車内が暗転し、そして、目の前が真っ暗になった。