あらすじ
田舎町の古い踏切で起きた事故がきっかけで、奇妙な都市伝説が語り継がれる。誰もが避けるその踏切に、好奇心から近づいた高校生が体験する恐怖。
本編
夏の終わり、田舎町の風景が色づく頃、私たち高校生の間で「踏切の伝説」が流行っていた。その踏切は、町の外れにぽつんとある古いもので、10年前の夜、とある事故が起きた場所だ。
「本当に幽霊が出るんだって」
友人の健太が興奮気味に言った。私は半信半疑だったが、健太ともう一人の友人、真理と一緒にその踏切を訪れることにした。
踏切に近づくと、空気がひんやりと冷たくなったような気がした。周りは田んぼと古い家が点在し、人気はない。夕暮れ時、辺りは薄暗く、踏切の赤いランプが不気味に点滅していた。
「ここか…」真理が小さくつぶやいた。
私たちは踏切の前で立ち止まり、辺りを見渡した。何も起こらない。ただの古い踏切だ。
「何もないじゃん、帰ろうよ」と私が言おうとしたその時、遠くで電車の音が聞こえてきた。踏切の警報機が鳴り始める。しかし、電車は見えない。
「おかしいな…」健太が首を傾げる。
警報機の音が大きくなり、赤いランプが激しく点滅する。それでも電車は見えない。
(なんだろう、この違和感は…)
突然、風が吹き抜けた。踏切のバーが降りてくる。しかし、どこからともなく現れた少女の姿が私たちの目の前にあった。彼女は古い制服を着ていて、こちらを見つめている。その表情は哀しげで、何かを訴えかけるようだった。
「あの…あの子は…」
真理の声が震えていた。少女は静かに口を開く。
「助けて…」
その瞬間、本当の電車の音が響き、少女の姿は消えた。私たちは驚いて飛び退いた。
「急に現れて…」
健太が言葉を失っていた。電車が通り過ぎ、踏切のバーが上がる。少女の姿はどこにもなかった。
私たちは言葉少なに踏切を後にした。あの少女は一体何者だったのか。事故で亡くなった人の霊だったのか、それとも…