あらすじ
仕事の多忙さからいつもと異なる終電に乗った主人公。普段とは違う時間、違う雰囲気の中で起こる異変に気づく。
本編
仕事で疲れ切っていた。時計を見るともう深夜。今日はいつも乗る時間の電車を逃してしまい、やむを得ず終電に飛び乗った。終電の雰囲気はいつもとはまるで違っていた。車両はほとんど空で、静まり返っている。いつもなら見知らぬ人々の話し声や笑い声が聞こえるが、今夜はそれもない。
(こんなに静かだなんて...)
座席に腰掛け、ふと窓の外を見ると、通常とは異なる道を走っているように感じた。しかし、疲れているせいか、そのことに深く考えを巡らせることなく、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
数駅過ぎた頃、何かがおかしいことに気がついた。いつの間にか、車内の照明が暗くなり、周囲はほんのりとした光だけが残っている。そして、何よりも異常だったのは、次の駅に着かないことだった。
(どういうことだ?)
そんな疑問が頭をよぎった矢先、車内に冷たい風が吹き抜けた。窓はすべて閉まっているはずなのに...。そして、ふと見ると、反対側の座席に、先ほどまで気づかなかった老婆が座っていた。
「こんな時間に...」と心の中でつぶやきながら、老婆に声をかけようとするが、老婆はじっとこちらを見つめるだけで、一言も話そうとはしない。
その時、電車が急にスピードを上げた。外を見ると、知らない景色が流れていく。どこに向かっているのか、見当もつかない。恐怖で声も出ない。老婆に助けを求めようとするが、彼女の姿は消えていた。
「ここはどこだ...?」
つぶやきながらも、電車は暗闇を駆け抜けていく。そして、いつの間にか、私はその電車から降りていた。しかし、そこはどこか見知らぬ場所だった。終電に乗ったことを後悔しながらも、何とか家に帰る方法を探さなければと思ったその瞬間、目の前が真っ白になり...
目が覚めた時、私は自分のベッドの上だった。ただの夢だったのか? しかし、ジャケットのポケットからは見知らぬ駅の切符が出てきた。それを見つめながら、終電の夜の出来事を思い返す。あれは一体何だったのか...