あらすじ
嘘を見抜く特技を持つ主人公が、ある日、自分の能力に異変を感じ始める。周囲の人々が言う「真実」が、次々と嘘であることを悟り、恐怖に陥る。
本編
私には、他人が嘘をついているのを見抜く特技がある。だが、それが時には呪いのように感じることもある。特にその日は…
「今日は本当に楽しかったね!」友達の晴香が笑顔で言った。だが、その笑顔の裏には嘘が隠れている。私はそれを感じ取った。晴香は楽しんでなどいなかった。
「うん、楽しかった!」と私は返した。晴香は何も気づかない。私のこの「特技」を知らないからだ。
家に帰ると、母が「今日も遅かったのね。お疲れ様」と優しく言った。しかし、その声にも嘘が混じっている。母は私の帰宅を心からは喜んでいなかった。
(なぜだろう、今日は特に嘘が多い…)
夜、私はベッドに横たわりながら考えた。普段はこんなに嘘を感じることはない。一体何が違うのだろうか。
次の日、学校での出来事が私の疑問をさらに深めた。「試験、良い点取れた?」と聞くと、友達は「うん、まあまあかな」と答えた。だが、その言葉には自信がなかった。彼女は本当は悪い点数だったのだ。
(これは一体…)
そんな中、私にある恐ろしい考えが浮かんだ。もし、この世界が嘘で満ちていて、私だけがその真実を知っているとしたら…?その考えに、私は深い恐怖を感じた。
夜、再びベッドに入ると、私は決心した。「この特技」を使って、この世界の真実を暴く。たとえそれがどんなに恐ろしいものであっても。
翌日、私は普段通り学校へ行った。だが、今日は違った。私は一つ一つの言葉、一つ一つの行動を注意深く観察した。そして、その日の終わりには、私は確信に変わっていた。
(この世界は嘘で満ちている…そして、私はその真実を見ることができる)
その晩、私は自室でじっと考え込んでいた。私のこの「特技」が、なぜ今になって突如として強まったのか。そして、この世界の嘘をどう扱うべきか。
「もしかして、私の特技は…」と私は独り言を漏らした。ふと、幼い頃の記憶が蘇る。私が初めて「嘘」を見抜いたのは、まだ小さかった頃。親友が「大丈夫」と笑った時、その瞳に涙を隠しているのを見た時だった。
(あの時から、私はずっと嘘を見抜いてきたんだ…)
翌日、学校での出来事が私の疑問を更に深めることになった。「何かおかしいことあった?」と尋ねる友達に、「いや、何も」と答えた瞬間、私自身の言葉にも嘘が混ざっていることに気づいた。
(私自身も…嘘をついている…?)
この発見は私に衝撃を与えた。これまで自分だけが「真実」を見ていると思っていたが、実は自分自身も無意識のうちに嘘をついていたのだ。
家に帰ると、私は母に真剣な顔で問いかけた。「ママ、私、嘘を見抜くことができるんだけど…それって普通?」母は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑顔に変わった。「あなたは特別なのよ」と母は言った。だが、その言葉にも微かな嘘が混じっていた。
その夜、私は眠れなかった。嘘と真実の間で揺れ動く心。そして、突然の疑問が頭をよぎる。
(もしかして、この「特技」自体が…嘘なのでは…?)
その考えに至った瞬間、私の心は混乱に陥った。これまでの自信が崩れ去り、不安と恐怖が押し寄せてきた。
翌日、学校に行く途中、私はふと立ち止まった。周りの人々の会話、車の音、鳥の声…全てが不自然に感じられた。まるで、この世界全体が一つの大きな「嘘」であるかのように。
(私は何を信じればいいの…?)
その時、私は決断した。この「特技」を手放し、普通の生活に戻ること。真実と嘘の区別がつかなくても、自分の感じるままに生きること。
そして、私は深呼吸をして、再び歩き始めた。これからの人生は、真実と嘘が混ざり合う中で、自分自身の道を見つけていくことになるだろう。