あらすじ
引っ越した古家で見つけた人形。夜中、その人形が不気味に動き出す。
本編
新しい家に引っ越してきた私は、古びた屋根裏部屋で一つの人形を見つけた。昔ながらの和服を着た、一見何の変哲もない人形だった。しかし、夜が深まるにつれ、人形の存在が気になり始めた。
「こんなの、昔の家具と一緒に処分すればよかったな…」と私は独り言を漏らした。
その夜、私は奇妙な物音で目を覚ました。時計はちょうど真夜中を指していた。ゆっくりと屋根裏部屋の扉を開けると、そこには…人形が座っていた。しかし、何かが違う。昼間見た時とは違い、人形の目がほんの少し動いているように見えた。
(まさか、これが動いてるのか?でも、そんなはずが…)
恐怖に駆られながらも、私は近づいてみることにした。すると、人形の目がこちらを見ているような気がしてきた。その瞬間、人形の口がわずかに開いた。
「あなた…私を…」
声が聞こえたような気がしたが、それ以上の言葉はなかった。私は恐怖で固まり、その場から動けなくなった。
翌日、私はその人形を持って近所の骨董屋に行った。店主は人形を見て顔色を変え、「これは…昔、この家に住んでいた女性のものだ。彼女は若くして亡くなったが、人形には彼女の魂が宿っていると言われている」と語った。
その晩、私は再び屋根裏部屋に行き、人形に手を合わせた。「あなたの想い、伝わったよ。安らかにね」と言い、人形をやさしく包んでお墓に納めた。
それからは、夜中の奇妙な物音もなくなった。人形の魂は、やっと安らぎを得たのかもしれない。