あらすじ
仕事のストレスが原因で不眠症に悩まされるようになった主人公。夜な夜な見る恐ろしい夢と現実の境界が曖昧になり、次第に自分の理性を失い始める。
本編
仕事のストレスがピークに達した頃、私は不眠症になった。「今夜こそは」と布団に入るものの、目を閉じても心は落ち着かず、眠りにつけない日々が続いた。そして、僅かに眠れたとしても、それは一時的な安息に過ぎなかった。眠りにつくとすぐに、恐ろしい夢が私を襲う。
夢の中で私はいつも、暗く狭い通路を一人で歩いている。その通路の先には何があるのか、その答えを知りたくないのに、足は勝手に進んでいく。そして、その先にあるのは、いつも自分の死体。その光景を見るたびに、怖くて声も出ない。
この恐ろしい夢は、次第に現実の世界にも影響を及ぼし始めた。昼間、仕事中にも、その通路が頭から離れない。仕事のミスが増え、上司からの叱責も日増しに厳しくなっていく。そして、ある夜、ついに夢と現実の境界線が曖昧になった。
布団に入り、目を閉じるとすぐに、あの通路に立っている自分がいる。「夢だ…夢に違いない…」そう自分に言い聞かせるが、今までとは違い、何かがおかしい。この感覚、この空気、全てがリアルすぎる。振り返ると、そこには自分の死体ではなく、仕事の上司が立っていた。「もう逃げられない」という彼の声が、冷たく響き渡る。
目が覚めた時、私は自分の部屋にいた。しかし、その恐怖感は消えない。もはや夢と現実の区別がつかなくなっていた。その日を境に、私は仕事を辞めた。しかし、不眠症とその恐ろしい夢からは逃れられず、現在も治療を続けている。
夢と現実の境界が曖昧になる病。それが私にとっての不眠症だった。そして、その経験が私に教えてくれたのは、心の健康がいかに大切かということだった。