あらすじ
人気アイドルの事務所に届いた謎のプレゼント。開封されずに放置された箱は、やがて恐怖の序章を告げる。
本編
夏の終わりのことだった。私は人気アイドルグループ「スターライト」のメンバー、美咲。その日も、いつものように事務所でレッスンを終え、一息ついていた。
「美咲、これお前の?」マネージャーの高橋さんが、古びた箱を持ってきた。表には私の名前が書かれていた。だが、送り主の名前はない。
「私、こんなの頼んでないけど…」不気味に思いながらも、その場で開ける気にはなれず、私は箱を片隅に置いた。
数日が過ぎ、その箱は忘れられた存在となっていた。だが、ある夜、私たちはその箱に気づかされることになる。
「なんか、この辺臭くない?」グループの一員、結衣が鼻をつまんだ。
「あれ?これ、美咲の箱じゃない?」もう一人のメンバー、葉月が指摘した。確かに、その辺りから異臭がしていた。
「開けてみようか…」私は恐る恐る箱を開けた。中から現れたのは、枯れた花束と、変色した手紙。
(これは…いったい…)
手紙には、歪んだ文字で「ずっと見てるよ」と書かれていた。私たちは凍りついた。
その夜から、私たちの周りで奇妙なことが起こり始めた。スタジオの鏡には、指で書かれたようなメッセージが現れ、レッスン中には誰もいないはずの部屋から物音が聞こえるようになった。
「誰かが私たちを…ストーキングしてるの?」結衣が震えた声で言った。事態の深刻さに、私たちは警察に相談を決めた。
しかし、警察が調査を始める前のある日、私のロッカーに再び一つの箱が届けられた。中には、私の幼少期の写真と、もう一枚の手紙が入っていた。
(どうして、こんな写真が…?)
手紙には「いつも見てるよ。お前のすべてを」とあった。恐怖は極限に達していた。
その日から、私たちの恐怖は増すばかりだった。事務所のスタッフは24時間体制で警備を強化し、私たちの行動も厳重に監視されるようになった。でも、そのストーカーの正体はいまだに分からなかった。
ある晩、私は一人で残業していた。他のメンバーはとっくに帰宅し、事務所は静まり返っていた。それは突然起こった。
「美咲…」耳元でささやくような声がした。振り返ると、誰もいない。心臓が跳ねるようだった。
「誰かいるの?」声を上げても、返事はない。ただ、何かが私を見ているような気がしてならなかった。
(これ以上は無理…)私は急いで事務所を出た。でも、その夜のことが頭から離れなかった。
翌日、警察から連絡があった。ストーカーは逮捕された。それは以前私たちのファンだった人物で、精神的な問題を抱えていたという。
その後、事務所には奇妙なプレゼントも届かなくなり、私たちの日常は徐々に戻っていった。でも、あの夜のささやき声は今でも私の心に残っている。