窓の外

あらすじ

入院中の主人公が唯一楽しみにしていたのは、病室の窓からの景色。しかし、ある日から窓の外に現れる不可解な影に、彼の日常は恐怖に変わり始める。

本編

入院生活は単調だった。毎日、私はベッドに横たわり、窓の外の景色を眺めることが唯一の楽しみだった。病院の裏庭には四季折々の花が咲き、時折訪れる小鳥たちの姿に和む日々。しかし、それも束の間のことだった。

ある曇りの朝、私はいつものように窓を見やった。すると、いつもと違う影が窓辺に見えた。それは人影のようでありながら、不自然に歪んでいた。最初は目の錯覚かと思ったが、日が経つにつれてその影ははっきりとし、そして動き始めたのだ。

(これは何だ?幻覚か?それとも…)私は恐怖を感じつつも、目を逸らすことができなかった。影は夜になると消え、朝になるとまた現れる。病院のスタッフに話しても、「疲れているのですよ」と軽くあしらわれるばかり。

そして、ある夜、事態は急変した。「助けて…」というか細い声が聞こえてきたのだ。声は窓の外から聞こえているようだった。私はパニックになり、ナースコールを押した。

看護師が駆けつけてきたが、窓の外には何もいない。看護師は私を落ち着かせようとしたが、私の恐怖は増すばかりだった。

その夜以降、影はより大胆になり、窓ガラスを叩くようになった。しかし、他の人には何も見えないらしい。私は一人、この恐怖と向き合うしかなかった。

翌朝、私は決心した。自分の目で、窓の外の真実を確かめるために。看護師の目を盗み、車椅子に乗って裏庭へと向かった。そして、窓の外に立つと、そこには何もなかった。ただの裏庭、花々、そして小鳥たち。私は安堵したが、同時に混乱も感じた。影が何だったのか、その答えは見つからなかった。

「大丈夫ですか?」背後から声がした。振り返ると、そこには親切そうな中年の医師が立っていた。「あなたが窓辺で見ていた影のこと、私も知っています。」

医師によると、その窓の外には以前、別の病棟があったという。そこで亡くなった患者が、時折、窓辺に現れるという噂があったのだ。しかし、それは単なる都市伝説で、実際は何もいないという。

「でも、あなたが見たものは現実です。あなたは、過去の患者の思いを感じ取ったのかもしれません。」医師は優しく微笑んだ。「ここはもう安全ですよ。心配無用です。」

その言葉に安心し、私は再び病室に戻った。窓の外を見ると、不思議と心が軽くなっていた。もはや恐怖はなく、ただの平和な風景が広がっていた。

私は病院での生活を続けながら、次第に回復していった。そして、あの影のことは、やがて心の奥底にしまわれ、遠い記憶となった。それから数週間後、私は無事に退院することができた。

窓の外の景色は変わらない。でも、私の心は変わった。恐怖を乗り越えた今、世界はより明るく、美しく見える。窓の外の世界は、もはや私を怖がらせることはなかった。

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